第十二回/2011年 21世紀ケロリン俳句大賞第十二回/2011年 21世紀ケロリン俳句大賞

【選評】

新千年紀とともに始まった21世紀ケロリン俳句大賞も第十二回目。未曾有の大災に見舞われた直後の今回の投句には、これまでにもましていのちの貴重さ、かけがえのなさが切実に感じ取られた。
大賞の井上次雄さん、改めて詠まれてみれば、たしかに土偶の女性像はほとんど妊娠した姿。おそらく人間をはじめ自然への多産・豊饒への祈りがこめられているのだろう。今回の被災地みちのくは土偶の一大中心地。その上に昇るみどりの春月には復興への思いが投影されているのだろう。
優秀賞の竹澤聡さん、冬に入ったばかりの病院の手術室で、手術医がてきぱきと正確に動いている。それは患部を除きいのちを輝かせる眩しい動きなのだ。同じく優秀賞の鷲津誠次さん、高校野球だろうか。やっと塁に出た球児を祝福するかのように、頭上を飛行機雲が潔く伸びていくのだ。
学生の部の優秀賞の横田楓さん。蛙たちがにぎやかに鳴き交わす田んぼの夜をオペラという発想が、九歳という年齢にふさわしく新鮮そのもの。いっぽう、ケロリン社長賞の小谷卓さん、夕立後のアスファルトに、逆に通りすぎた夕立の匂いを感じ取った十四歳の感覚の鋭さに驚かされた。
ご覧いただけばお分りのとおり、一般の部・学生の部、共に、佳作・準佳作・入選それぞれ力作がひしめいている。そのすべてに拍手を送りたい。

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【審査員】

写真:高橋睦朗氏

高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi

現代日本を代表する詩人のひとり。現代詩のほか、俳句・短歌・小説・脚本など多方面に活躍。俳句関係の著作に『荒童鈔』『稽古』『賚』『花行』『遊行』『十年』『私自身のための俳句入門』『百人一句』『季話百話』『歳時記百話』『詩心二千年』。読売文学賞ほか受賞多数。二〇〇〇年度 紫綬褒章、二〇一二年度 旭日小綬章、二〇一五年度 現代俳句大賞受賞。

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