第十三回/2012年 21世紀ケロリン俳句大賞第十三回/2012年 21世紀ケロリン俳句大賞

【選評】

21世紀ケロリン俳句大賞も新世紀十三年目と共に、第十三回目を迎えた。今回の投句にも、私たち人間をとり巻く自然の貴重さ、自然に守られたいのちのいとおしさが切実に表現されていて、心を打たれた。
大賞の酒井和平さん。晩秋のある日の午後、所用があって芒のそよぐ中を通って往き、帰りも同じところを通った。往路はまだ昼間で芒は銀色だったのが、帰路は入日に染まって金色。その息を飲む変化の美事さに、地球という美しい星に生きている幸福をつくづくと実感したのだろう。
優秀賞の小松原純子さん。晩夏の病室だろうか。透明な管を通って刻一刻、滴一滴と体内に給される点滴液の音ともいえない微かな音に夜の秋を感じ、一回きりの生のかけがえのなさを覚えたということだろう。同じく優秀賞の十河清さん。いちめんの花ざかりの中、年ごとに新たな気持ちで桜をめでる自分を、人間であり黄色人種であり日本人であると、改めて自覚したのだ。
学生の部の優秀賞の仲里栄樹さん。真っ白な呼吸を溜めた肺に冬を感じたという若々しい詩情に圧倒された。また、ケロリン社長賞の小杉花菜さん。野原で転んだのだろうか。ひざを汚して照れかくしに笑っている手の中にはクローバーの花の快い感触があったという感覚も、みずみずしく素晴らしい。
一般の部・学生の部、その他の作の魅力も一句一句味わっていただきたい。

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【審査員】

写真:高橋睦朗氏

高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi

現代日本を代表する詩人のひとり。現代詩のほか、俳句・短歌・小説・脚本など多方面に活躍。俳句関係の著作に『荒童鈔』『稽古』『賚』『花行』『遊行』『十年』『私自身のための俳句入門』『百人一句』『季話百話』『歳時記百話』『詩心二千年』。読売文学賞ほか受賞多数。二〇〇〇年度 紫綬褒章、二〇一二年度 旭日小綬章、二〇一五年度 現代俳句大賞受賞。

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