第十四回/2013年 21世紀ケロリン俳句大賞第十四回/2013年 21世紀ケロリン俳句大賞

【選評】

新世紀とともに始まったケロリン俳句大賞も、第十四回。今回の投句には熟年のヴェテランの中に若い力の加わったことが目立った。とくに学生の部に力作の多かったこと、頼もしい限りだ。
大賞の馬場隆太郎さん。愛児と共浴する湯ぶねがそのまま窓の外の月光の中に舟出するかのような幸福感。その舟出は希望に満ちた未来への舟出でもあってほしいものだ。
優秀賞の五嶋吉人さん。爽秋の夕刻だろうか、新聞配達の少年が向こうから来て、新聞を届けるとともに去って行った。その爽やかな動きによって、爽やかな空気がいっそう爽やかに感じられたのだろう。同じく優秀賞の岸しのぶさん。こちらは生身魂と敬意を持って呼ばれるほどの高齢者に握手を求めると、驚くほど強い握力の握手を返してきた。三句それぞれにまぶしいまでの生命讃歌だ。
つづいて学生の部、優秀賞の平原陽子さん。人類の歴史がDNAの二重螺旋によって形成されたという科学的発見が、初夏のひととき改めていきいきと感じられたという、これはいかにも学生らしい、世界認識・自己認識の句。ケロリン社長賞の川上まなみさん。初雪降る中で、自分の中でこくんこくんと音を立てている心臓の存在を感じている、これもいかにもういういしい青春の句。
一般の部、学生の部ともに、佳作、準佳作、入選、すべて力作揃い。一句一句声に出して味わっていただきたい。

◎なお審査員の責任において部分的に添削した作があることを申し添えます。

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【審査員】

写真:高橋睦朗氏

高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi

現代日本を代表する詩人のひとり。現代詩のほか、俳句・短歌・小説・脚本など多方面に活躍。俳句関係の著作に『荒童鈔』『稽古』『賚』『花行』『遊行』『十年』『私自身のための俳句入門』『百人一句』『季話百話』『歳時記百話』『詩心二千年』。読売文学賞ほか受賞多数。二〇〇〇年度 紫綬褒章、二〇一二年度 旭日小綬章、二〇一五年度 現代俳句大賞受賞。

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