第十五回/2014年 21世紀ケロリン俳句大賞第十五回/2014年 21世紀ケロリン俳句大賞

【選評】

ことしは2015年。いのちを見つめ宇宙を見つめるケロリン俳句大賞も早や十五回。ことしも一般の部、学生の部、共に清新かつ力のこもった作品が多数寄せられた。
 まず一般の部。大賞の池内和世さん。丹精こめた自家製パンの生地の中の酵母がいきいきと目覚め、パンを成長させている。戸外は折から激しい野分の雨風。内外の静と動の対比が一句に深い生命感を与えた。
 優秀賞の阿部昌彦さん。踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々……という阿波踊り。手を高々と挙げてこちらに来るおん歳八十八歳、矍鑠(かくしゃく)たる阿呆どのだ。同じく優秀賞の山田ゆかりさん。鳥帰る季節、小学校だろうか中学校だろうか、最高学年の生徒たちが最後の授業をすませて、起立・礼をしている。天地共に旅立ちの時なのだ。
 つづいて学生の部。優秀賞の横森太陽さん。夜間の寸暇を惜しんでジョギングをしている。ゴールは次の街灯。そこまで夜寒がつづくが、その後は? 自分にごほうびとして熱い一杯の缶コーヒーをということかもしれない。社長賞の木村杏香さん。自分にも他人にも一人ずつに名前があること、考えてみれば不思議なことだ。そう思って空を見ると星が一つ一つ、改めて冴え冴えと美しいのだ。
 そのほかも、一般の部・学生の部共に魅力的な句がひしめいている。なお、一部にすでに発表された句に似たものがあり、残念ながら落とさざるをえなかった。 ◎なお審査員の責任において部分的に添削した作があることを申し添えます。

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【審査員】

写真:高橋睦朗氏

高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi高橋睦朗氏 Mutsuo Takahashi

現代日本を代表する詩人のひとり。現代詩のほか、俳句・短歌・小説・脚本など多方面に活躍。俳句関係の著作に『荒童鈔』『稽古』『賚』『花行』『遊行』『十年』『私自身のための俳句入門』『百人一句』『季話百話』『歳時記百話』『詩心二千年』。読売文学賞ほか受賞多数。二〇〇〇年度 紫綬褒章、二〇一二年度 旭日小綬章、二〇一五年度 現代俳句大賞受賞。

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