風邪に対する薬で、西洋薬と漢方薬の違いを教えてください。風邪に対する薬で、西洋薬と漢方薬の違いを教えてください。

A.天野 : 風邪でお医者さんに行くと、熱があれば解熱薬、のどに痛みがあれば抗炎症薬、咳があれば鎮咳薬、鼻水や鼻づまりがあれば抗ヒスタミン薬といった具合に、それぞれの症状に対応した薬が処方されます。市販のOTC薬は、これらの症状に効果がある成分をほど良く組み合わせて配合されています。
一方漢方医学では、風邪が生体のどの位置にあり、どのような状態にあるのか、体力があるかないか、元来痩せているのか、などを見極めて薬を使い分けていきます。同じ病気でも患者さんの全身状態によって使う薬が異なるのが、漢方の大きな特徴といえます。
一般的に風邪の初期症状は頭痛、発熱、ぞくぞくとした寒気ではじまります。漢方ではこの時期、病邪は「表」つまり皮膚、筋肉など体の表層部にあり、汗とともに「邪」を外に出せば治ると考えます。最初に汗を出す発汗を重要視します。邪が内部に入り込むと咳、痰などの症状が出てきます。脇腹の下の抵抗感と圧痛、さらに悪寒と発熱を繰り返す往来寒熱の症状も見られるようになります。邪が「表」から体内の深部臓器である「裏」の中間に至ったと考え「半表半裏」と表現します。さらに邪が進んで体の「裏」に至ると消化器系に影響が及び下痢などの症状が現れます。病状がどのような位置、状態にあるかによって使う漢方薬も違ってきます。(表1参照)

【参考資料】
漢方で虚弱体質を治したい方へ(主婦の友社刊・代田文彦著)
漢方医学テキスト治療編(医学書院刊・日本漢方医学研究所監修)

表1 風邪の漢方療法

病期 病態 主な漢方薬
風邪の引きはじめ
(2〜3日)
表証:浮脈、頭痛、項強、悪寒、筋肉痛などがある 実証:葛根湯、麻黄湯
虚証:香蘇散、桂枝湯
風邪が進行
(4〜7日)
半表半裏証:全身が衰弱し、気管、気管支の炎症、往来寒熱、脇腹に抵抗感、圧痛 実証:小柴胡湯、小柴胡湯加桔梗石膏
虚証:柴胡桂枝乾姜湯、参蘇飲
風邪がさらに進行
(8〜10日)
裏証:体の深部まで進行した状態、胃腸炎症状が主となる持続熱。抗菌剤を用いることが多い。

(漢方医学テキスト治療編、漢方保険診療指針などを参考に作成)