高齢者や体力が衰えている虚証の人の風邪の初期にはどんな漢方処方がいいですか?高齢者や体力が衰えている虚証の人の風邪の初期にはどんな漢方処方がいいですか?

A.天野 : 一般に虚証の人は体力がなく生体反応が弱いため,風邪を引くと長引く傾向にあります。虚弱な人は風邪を引いたかなと感じた早い時期に適切な漢方薬を服用すれば、こじらせずにすみます。風邪の引きはじめに使う漢方薬には、葛根湯の他に麻黄湯(まおうとう)や小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)もありますが、いずれも麻黄を含んでおり、胃腸が弱い人では悪心、下痢、腹痛を起こすことがありますので注意が必要です。比較的体力が低下した人、虚弱な人にはいくつかの漢方処方がありますが、新薬が合わない人、胃腸が弱い人、神経質な人、高齢者などに香蘇散は最も良い処方だと思います。とくに高齢者は丈夫そうにみえても抵抗力が衰えている人が多く、好んで用いられているようです。
虚証の人向けの風邪の初期に用いる漢方薬として桂枝湯(けいしとう)もありますが、胃腸が弱く、気うつ傾向があり、食欲不振、精神不安、頭痛などがある人には香蘇散をおすすめします。香蘇散に関する近年の処方解説をみると、トラブルが少ないこともあって、高齢者の増加とともに見直されているのではないでしょうか。

【参考資料】
1) 漢方医学テキスト治療編(医学書院刊・日本漢方医学研究所監修)
2) 洋漢統合処方からみた漢方製剤保険診療マニュアル(ライフ・サイエンス刊・秋葉哲生著)
3) 東洋医学(岩波書店刊・大塚恭男著)